研究戦略・プロジェクト

エネルギー創出への総合的な取り組み

エネルギーを大量に消費する大都市を支えるため、都市における地産地消型のエネルギー創出に取り組みます。これまでに、機械物理系、化学生物系、都市系の各専攻の個々のグループで進められてきた4つの「エネルギー」に関する研究を、互いに連携し総合的に取り組むことにより、研究の進展を加速させ、研究成果を新たな都市施策として反映させることを目指します。また、連携により生まれた新たなエネルギー研究の種も育てていきます。

木質系バイオマスからのエネルギー開発 波力発電技術の開発 都市における未使用エネルギーの活用と熱回収効率の改善 大型・汎用新型蓄電池の開発 機械物理系専攻 化学生物系専攻 都市系専攻

テーマ1:木質系バイオマスからのエネルギー開発

食料と競合しない木質系バイオマスは潜在的な資源量が多く、そこから得られるエネルギーは化石燃料代替エネルギーとして有望です。しかし、バイオマス輸送に多くのエネルギーを消費してしまい、日本での実現は難しい状況です。本プロジェクトでは、都市で発生する木質系バイオマスを、水素やメタンなどの燃料や電気に効率よく変換し、地産地消のエネルギー創出を目指します。また、木材に約30%含まれるリグニンについても、石油由来化学合成原料の代替物質として利用を検討し、「木質系バイオマスの100%利用」を提案します。

  • ・硫酸等の薬品を大量使用しない
  • ・100%有効利用する
  • ・地産地消に適している
  • 建築廃材、製材廃材、剪定枝、古紙 水熱触媒ガス化 メタン、水素、一酸化炭素
  • UCT 溶媒処理(リグニンを抽出して有効利用)
  • グルコースキシロース
  • バイオマス発電

テーマ2:波力発電技術の開発

波力は魅力的な自然エネルギー源ですが、我が国では船舶の航行安全や漁場確保の観点から、海上への構造物設置が厳しく制限されています。そこで、図のようなスリット式防波堤内部にミニ発電システムを設置し、スリットから流入するエネルギー密度の高い流れを利用する発電システムの開発を行っています。右図は発電機構の一例で、柔軟な板が流れにより曲げられてワイヤーを引っ張り、その力を動力に変換する構造を表しています。

  • ・既設構造物に発電機構を設置可能
  • ・エネルギー密度の高い流れを利用
  • ・地産地消に適している

スリット式防波堤内部

発電機構の一例

テーマ3:都市における未利用エネルギーの活用と熱回収効率の改善

家庭で消費されるエネルギー全体の約1/3を占める給湯用エネルギー消費はより一層の省エネが求められている。省エネ対策の一つとして家庭において排水熱が大きい浴室排水を中心に熱回収を行い、上水に熱を与える上水予熱システムを検討する。一般的なユニットバス内に設置可能な熱交換器の開発、熱通過率の向上などが開発課題である。また、単一の世帯では排水開始時間と給湯需要時間にずれ(タイムラグ)が大きいが、複数世帯で熱交換器を共有し熱融通をすることで、タイムラグが減少し回収熱を有効に利用できる可能性がある。本研究では同一階の5世帯で熱交換器を共有する上水予熱システムを想定し、各世帯の排水パターンを模擬した実験を行い、熱回収率によってシステムの評価を行っている。

住宅用途別エネルギー消費量比率 給油用熱量の3~4割程度が排水として捨てられている
浴室排水から熱回収を行う上水余熱システム

テーマ4:大型・汎用新型蓄電池の開発

非鉛系蓄電池とは、リチウムインサーション材料の組合せからなる12V蓄電池規格に適合した蓄電池のことです。材料の組合せの違いで、第1世代と第2世代という個性の異なる二種類の蓄電池を提案しています。これら非鉛系蓄電池は大型・汎用蓄電池として、太陽光発電などの再生可能エネルギーと組み合わせた「蓄エネ」に貢献することを目指しています。

非鉛系蓄電池グラフ

OCUで生まれた材料からなる蓄電池。鉛(酸)蓄電池のできなかったことを実現。

  • 大きなエネルギー密度 第1世代で鉛蓄電池の2~3 倍、第1世代で3~5倍
  • 長寿命と高い信頼性 基礎研究段階で3600サイクル・10年使用を確認

※12V鉛(酸)蓄電池・・・世界中で最も普及している蓄電池